前立腺肥大症とは?

前立腺肥大症とは?

前立腺は尿道の奥にあり、精液の一部を分泌する男性固有の臓器です。
尿道を取り囲むように存在しています。

加齢とともに性ホルモンのバランスが崩れ、前立腺が大きくなる(腫大)と尿道が押しつぶされて、排尿障害が生じます。 これが前立腺肥大症です。 加齢とともに性ホルモンのバランスが崩れ、前立腺が大きくなる(腫大)と尿道が押しつぶされて、排尿障害が生じます。 これが前立腺肥大症です。

前立腺肥大症 前立腺肥大症

前立腺肥大症の症状は?

十分に尿をためることができない、頻尿や尿失禁など(蓄尿症状)。尿の勢いがない、 腹圧排尿など(排出症状)。残尿感や尿のキレが悪い(排尿後症状)などがあります。 また全く排尿ができない尿閉という状態になることもあります。ただし必ずしも排尿 症状は前立腺の大きさとは関係はなく、脳脊髄系などの異常による排尿障害を除いた 排尿症状を、前立腺肥大症と総称することもあります。前立腺が大きくても(前立腺肥大) 、症状が伴わなければ前立腺肥大“症“とはされません。

前立腺肥大症の検査は?

まずは問診を行い、国際前立腺症状スコア(IPSS)で症状を点数化し重症度を判定します。 次に肛門から指を入れて前立腺の大きさ、硬さなどを触診で調べます。尿検査を行い、 血尿の有無、尿路感染の合併などを調べます。画像検査としてCTや超音波検査を行い、 前立腺の大きさを測定します。さらに尿の勢いを調べるため、実際に排尿してもらい単位時間 当たりの尿量を調べる尿流検査と残尿測定を行います。また前立腺癌がないかどか、血液検査 でPSA(前立腺特異抗原)を測定します。

国際前立腺症状スコア(IPSS)

国際前立腺症状スコア(IPSS)

QOLスコア

QOLスコア

当院における薬物療法

日常生活指導で症状が改善する場合もありますが、前立腺肥大症による症状を緩和するための治療は薬物療法が主体となります。 前立腺の大きさ、年齢、合併症、併用薬などにより、個々の患者にどの薬剤が適切か検討します。 下記の薬物療法で効果がない場合、または尿閉、尿路感染症の合併、膀胱結石の合併などがある 場合、手術療法が選択となります

アルファ遮断薬

膀胱の出口と前立腺の筋肉を緩め、尿の出方を改善します。起立性低血圧、めまいなどの副作用が生じることがあります。

5アルファ還元酵素阻害薬

男性ホルモンであるテストステロンの前立腺に対する作用を遮断することで前立腺の萎縮ははかります。ただし服用をやめると前立腺は元の大きさに戻ります。

抗アンドロゲン薬

精巣からのテストステロンの分泌、前立腺へのテストステロンの取り込みなどを阻害し、前立腺を縮小させます。性機能・肝機能障害などの副作用がみられる事もあります。

植物エキス製剤・漢方薬

前立腺の炎症を抑え、むくみを改善し症状を緩和します。効果は穏やかですが、副作用の心配もほとんどありません。

PDE5阻害薬

前立腺の筋肉を弛緩させるcGMPという物質はホスホジエステラーゼ5(PDE5)で不活化されます。 そのPDE5の働きを阻害する薬剤です。血管を広げる作用を有するため、頭痛やほてりの副作用が現れることがあります。

Q: 前立腺肥大症の手術は?

外科的治療法は以下のような方法があります。 当院では大きな前立腺肥大にも対応可能で、治療効果の高いHoLEPを中心に手術を行っております。

1.組織の切除・蒸散を主体とする治療

1)開腹術(被膜下前立腺腺腫核出術)
2)経尿道的前立腺切除術(TUR-P)
3)経尿道的前立腺レーザー核出術(HoLEP)
4)KTPレーザー光選択的前立腺蒸散術(PVP)
5)経尿道的バイポーラ電極前立腺腺腫核出術(TUEB)

2.組織の熱凝固・変性を主体とする手術

1)経尿道的水蒸気治療(WAVE)
2)組織内レーザー凝固術(ILCP)
3)高密度焦点式超音波(HIFU)
4)経尿道的マイクロ波高温度治療術(TUMT)

3.その他

尿道ステント留置 など

経尿道的前立腺レーザー核出術(HoLEP)とは?

レーザー光を使用した治療は出血や痛みが少なく、患者への負担の少ない手術を可能 としています。ホルミウム・ヤグレーザーという種類のレーザー光を使用するHoLEPは 肥大した前立腺の腺腫のみをくりぬく(核出)ことで、腺腫の尿道への圧迫を解除し、 尿道抵抗を減らし尿の勢いを増します。くりぬいた前立腺はモルスレーターという機械で摘出します。

HoLEP

従来より行われてきたTUR-P(経尿道的前立腺切除術)は、腺腫を削り取るためその度に出血し、 削る(切開)と止血(凝固)を交互に行わなけらばなリません。

腺腫を削らず切開と凝固を同時に出来るHoLEPに比べるとどうしても出血が多くなります。そのため大きな前立腺肥大症(概ね前立腺体積100ml以上)に対するTUR-Pは困難で、施設によっては開腹術が選択される場合もあります。 当院では紹介患者を中心に、100mlを超える大きな前立腺肥大症も年に20-30例ほど大きな合併症もなくHoLEPを施行しております。

HoLEPの治療成績と合併症などはどうでしょうか?

当院では年間約200例のHoLEPの手術実績があり、2016年6月現在累計手術件数は1600例を超えています。 これはDPC導入病院の中でも年度別で3指に入る件数です。 最大尿流率(尿の勢い)は手術直後と1年後でそれぞれ約50-70%改善し、残尿量も1/2-1/4に減少しております。

  • 最大尿流率 

    最大尿流率 
  • 残尿量

    残尿量

IPSS/QOL scoreは手術直後から改善し、患者さんの満足度も高い結果が得られております。

IPSS・QOL scoreの変化

  • IPSS

    IPSS
  • QOL score

    QOL score

合併症ですが、過去4年間で輸血を要した症例は0.72%で、その半数は前立腺体積が180mlを超える巨大な前立腺 肥大症でした。尿失禁は手術6ヶ月目でpadを1日1-2枚使用するような尿失禁例は2.2%でした。また手術関連死は ありませんでした。

高齢であっても手術はできますか?

合併症(心疾患、肺疾患、脳血管障害など)の有無、併用薬の内容により手術困難な例はありますが、高齢である、 というだけで手術ができない事はありません。当院での手術患者の5.6%は80歳以上の方で、安全に手術が施行されております。

入院期間はどれくらいでしょうか?

手術に必要な検査は遠方の方以外は全て外来で済ませております。
入院翌日に手術を行い、血尿の程度を見て手術3日後に尿道カテーテルを抜去、尿の勢いの検査を行い退院となります。
入院期間は約1週間です。

費用はどれくらいでしょうか?

手術に必要な検査は遠方の方以外は全て外来で済ませております。
HoLEPは保険適応となっております。保険の種類により費用は変わりますので詳細は外来事務窓口にてご確認ください。

前立腺肥大症 HoLEPの動画

2016年04月10日放送
「医TV」前立腺肥大症 HoLEP(ホーレップ)治療
近年増加傾向にある前立腺肥大症に対して、低侵襲で負担の少ない治療法として注目される、ホルミウム・ヤグレーザーにより、肥大した前立腺の内腺を核出(くりぬく)する、HoLEP(ホーレップ)治療を行っています

経尿道的水蒸気治療(WAVE)とは?

WAVE(WAter Vapor Energy):経尿道的水蒸気治療とは、水蒸気を用いて前立腺肥大症を治療します。
低侵襲かつ異物を体内に残さずに治療することが可能になります。

前立腺肥大症(Rezum) 前立腺肥大症(Rezum)

WAVEはどのような手術?

当院ではRezum(レジューム)システムを使用して、103℃の水蒸気を9秒間噴霧し、前立腺組織を約70℃まで上昇させ組織を壊死する治療を行います。 既存の前立腺肥大症に対する温熱療法とくらべ、水蒸気を利用しているため対流によってムラのない治療効果が実現され、尿道粘膜や性機能温存を可能としました。
治療時間は15分程度で、治療効果は、おおよそ2週間程度、長くても3カ月後には排尿状態の改善が期待できます。

Resumシステム Resumシステム

WAVEの治療成績は?

前立腺肥大の状況を判断するIPSSやQmaxの臨床結果で5年間の有効性が報告されています。
また、5年間での再手術率は4.4%であり、3年目以降は新たに手術が必要になった患者さんはいないとされています。

IPSS:軽度 0-7点、中等度 8-19点、 重度 20-35点

(HoLEPの場合 23→4点に改善)

臨床結果 臨床結果





Qmax:軽度 15ml/s以上、中等度 5ml/s以上、 重度 5ml/s未満

(HoLEPの場合 5ml/s→25ml/sに改善)

臨床結果 臨床結果

手術をおすすめしたい方

・薬物療法であまり効果がでない方


・外科的な治療のリスクが危惧されている方


・長期的にカテーテル留置をしている方でトイレに行ける方(自己排尿を目指す方)


・Urolift手術で体内にインプラントを残したくない方(特に尿路結石症になりやすい方)


当院におけるWAVEの治療

当院のおけるWAVEの治療は、安全を考慮して手術後のバルーンを抜去できるまでの入院期間5~7日間で行います。

外来診療

前立腺肥大症の程度を検査し、今後の治療方針を決めていきます。 手術に対応できる身体か、検査を行います。 血液をさらさらにする薬(抗血小板薬)を内服されていても治療は可能です。

入院

入院翌日が手術になりますので、前日から入院し手術に備えます。

手術

手術当日、病棟から手術室に徒歩で移動して手術を行います。 手術前に麻酔を行うためあまり痛みはありません。 麻酔の効きを確認してから、尿道に膀胱鏡を挿入し、WAVE手術を行います。 手術は約15分後に終了し、尿道にカテーテルを挿入して尿道の確保を行います。

術後の経過観察

入院時は、痛みや尿の状況を確認、ばい菌などがないか経過を観察します。 カテーテルが抜去できる状況になったら、排尿ができているか確認し退院します。 その後、退院1カ月後に外来を受診していただき、退院後の状況を確認します。

再発時の対応

数年後に前立腺肥大症となり排尿困難となった場合は、WAVE手術かその他の治療を選択します。

WAVE術後の経過

・はじめのうちは前立腺がむくんでいるため術前よりも尿の出方が悪いことがあります。2週間後から3ヶ月の間に、徐々に前立腺のむくみが取れ組織が壊死し治療効果が現れるようになりますので少し気長に症状の改善を待ちましょう


・治療の効果が出てくるまで術前に内服していた前立腺肥大症の薬は継続します。


・カテーテルを抜去しても尿が出にくい状態の時にはカテーテルを再留置して1週間程度経過を見る場合があります。


・術前に尿閉(尿が全く出ない状態)で尿道カテーテルを留置していた患者さんや自己導尿をしていた患者さんでは、術後もしばらくの期間、尿道カテーテルの留置や自己導尿が必要となる場合があります。外来で経過観察しながらカテーテルの抜去、自己導尿の離脱を検討します。


WAVEの合併症は?

低侵襲であるため、大きな合併症が少ない手術ではありますが、術後に下記の合併症を起こすことがあります。

尿道の痛み・違和感

水蒸気注入やカテーテルによる尿道や会陰部の違和感・疼痛を感じることがあります。鎮痛剤などで対応します。

尿路感染症

尿路感染症を発症することがあります。発熱を伴うこともあります。抗菌剤の内服・点滴で治療します。

肉眼的血尿

穿刺した部分や壊死した前立腺組織から出血し血尿が出現することがあります。止血剤の内服などで対応可能なことがほとんどですが、稀に麻酔をかけ止血術が必要になる場合があります。

排尿困難

排尿困難の原因が前立腺だけでなく膀胱の機能低下にもある場合には、症状が改善しにくいことが予想されます。

その他

・性機能への影響が少ない治療法ですが術前と全く同じ状態が維持されるかは個人差があります。精液量が減る可能性があります。
・しばらくの間、精液に血液が混じりますが異常ではありません。
・数ヶ月から1年以上たってから尿道が狭くなることがあります。

HoLEPとの選択に迷った場合はどうすればよいですか?

HoLEPは、WAVEよりも排尿機能が改善されるため、当院では前立腺肥大症の手術の第一選択としています。  前立腺の大きさや、併用薬や、手術に対応できる身体の状況により、HoLEPでは困難な場合にWAVEを選択する場合があります。

WAVEの入院期間はどれくらいでしょうか?

入院期間は約5~7日間です。 入院翌日に手術を行い、血尿の程度を見て手術4日後を目安に尿道カテーテルを抜去、尿の勢いの検査を行い退院となります。
手術に必要な検査は遠方の方以外は全て入院前の外来診察時に行います。

WAVEの費用はどれくらいでしょうか?

WAVEは保険適応となっております。保険の種類により費用は変わりますので詳細は外来事務窓口にてご確認ください。

前立腺肥大症 WAVEの動画