尿路結石症

ごあいさつ

令和3年4月より、医療機関さまや患者様からのご相談を真摯に受け止め、より良い治療を選択するために尿路結石治療センターを創設いたしました。
当院ではTULやPNL、ECIRS、そして、ESWLであらゆる尿路結石治療を行うことが可能です。
また症例に関するご相談や、セカンドオピニオンについてもお気軽にお問い合わせいただけますので、是非ご活用をして頂ければと存じます。
志を共にする医師との意見交換や教育の機会についても、積極的に進めてまいりたいと思いますので、ぜひお問い合わせください。
センター長 加藤 祐司
お問合せサイトへ

加藤祐司

尿路結石治療センター 専門外来

毎週木曜日14時~16時

予約方法
地域連携室 (011-688-7849)
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尿路結石症とは?

尿の通り道(尿路)に結石がある状態が尿路結石症です。 尿の通り道(尿路)に結石がある状態が尿路結石症です。

日本では腎臓にできる腎結石と尿管に結石がはまってしまう
尿管結石が全体の95%を占めます(上部尿路結石といいます)。
他に、膀胱結石や尿道結石があります(下部尿路結石といいます)。

尿路結石症

結石の患者さんは増えている!

上部尿路結石症の患者さんは、日本では昔に比べるととても増えています。 男性は7
人に1人、女性は15人に1人の割合で、一生に一度は上部尿路結石になると言われて
おります。

結石の患者さんは増えている!
結石の患者さんは増えている!

これは40年前と比べて約3倍の数字です。 この病気は男性に多く認められるのが特徴で、
男性の方が女性より約3倍多く結石症になります。

どうして結石になるの?

上部尿路結石の原因は完全には解明されておらず、多くの原因が重なり合ってできると考えられています。

  • 1. 水分の摂取量が足りない(おしっこの量が少ない)
  • 2. 食生活(栄養が多い、かたよった食事)
  • 3. 性別・年齢
  • 4. 気候
  • 5. 遺伝(血縁者に結石の人がいるとなりやすい)
  • 6. 結石になりやすい病気・お薬

水分を摂る量が少ないと、尿が少なくなり濃くなるため尿の中に含まれている結石の成分が結晶化しやすくなります。 血縁者に結石症の方がいる場合には結石症になりやすいことも知られています。 また、食生活の欧米化も原因として指摘されています。 栄養が多すぎる食事やバランスの悪い食事などが結石の形成に関与していると考えられています。 実際に結石症の方は生活習慣病(高血圧、糖尿病、高脂血症)を合併している割合が高いです。 一方、下部尿路結石は前立腺肥大症や膀胱の神経の異常(神経因性膀胱といいます)などで残尿が多い場合や尿路感染症を合併している場合に膀胱の中で結石が作られます。

結石の症状は?

尿管結石の症状は、背中・わき腹・下腹部に激しい痛みが出ることが多いです。 また、血尿を認めることがあります。 一方、腎結石は症状が出ることが少なくCT検査などで偶然見つかることが多いです。 注意しなければならないのは、尿管結石で熱が出ている場合です。 これは結石性(閉塞性)腎盂腎炎という状態で、重症化して敗血症になり生命をおびやかすことがあります。

当院では、積極的に尿管ステントや腎瘻カテーテルを使用し、結石性腎盂腎炎の悪化を防ぎ早期回復に努めております。 膀胱結石は下腹部の違和感、血尿、尿の濁りや頻尿などの症状があります。 尿道に結石がはまると尿の出方が悪くなります。

診断はどうするの?

結石の位置、大きさ、尿の通り道の詰まり具合を確認する必要があります。 主に、CT検査、レントゲン検査、超音波検査で診断します。 CT検査は小さな結石も見逃すことが非常に少なく大変有用ですが、欠点として放射線を浴びる量が通常のレントゲン検査よりも多いことがあげられます。 この欠点を補うために、当院では放射線量を極力下げて撮影するlow-dose CTによる診断を積極的に行っています。 その他に、尿検査や血液検査を行います。

low-dose CT検査(低線量 CT検査)

尿路結石は、大きさや成分によってはレントゲン検査にて映らないものもあります。 CT検査では、非常に微小な結石や様々な結石成分においてもその位置や大きさ、尿管など周りの臓器の状態などが分かります。

low-dose CT検査は、放射線被ばく線量を減らすため通常のCT検査より照射線量を減少させて撮影を行います。 体型により幅はありますが、当院の通常のCT検査の約1/4ほどの線量にて検査を行っております。 画像の質は、通常のCT検査より劣りますが、当院の医師と診療放射線技師によって画像を評価し、尿路結石症の診断に見合う画像を提供しております。

下記の画像は、通常の線量のCTとlow-dose CTを比較した画像です。被ばく量を減らしても画像の診断ができます。


  • 通常の線量のCT画像

  • low-dose CT画像

当院では、尿路結石症の診断にlow-dose CT検査を積極的に取り入れており、患者様に安全にかつ正確な検査を行うよう努めております。

結石の治療はどうするの?

結石治療のポイントは、小さな結石は痛みのコントロールをしつつ自然に流れ出るのを待ちます(保存的治療)。 自然に流れ出ない大きさの結石は手術による治療を行います(手術的治療)。

1.尿路結石症の保存的治療

尿管結石の大きさが10mm未満の場合、自然に流れて出る可能性がありますので、1ヶ月間程度は流れ出るまで経過観察することが多いです。 流れ出やすくするためには尿の量が大事です。 たくさん尿を出すために飲水量を1日1.5から2リッター以上することが勧められます。 痛みに対しては痛み止めの内服や坐薬を使用します。 痛み止めを使用しても痛みがおさまらない場合や結石性腎盂腎炎を伴う場合には、尿管ステントや腎瘻カテーテルを挿入します。

2.尿路結石症の手術的治療

尿管結石では、10mm以上の大きさや10mm未満でも同じ場所から動かない場合には手術的治療が必要です。 尿管結石を長期間放置した場合、腎臓の働きが悪化したり尿管にダメージが生じたりすることがあるからです。 腎臓に結石がある場合は無症状のことが多いですが、尿管に落ちた時にはまって痛みが出る恐れのある大きさの結石は積極的に手術的治療を行った方が良いと考えます。 また腎結石を長期間放置した場合にも症状がないまま大きく成長してしまうことがあります。 尿路結石症の代表的な手術治療は、体外衝撃波破砕術(ESWL)、経尿道的腎尿管砕石術(TUL)、経皮的腎砕石術(PNL)、経尿道的膀胱砕石術(TUCL)です。 現在、開腹手術はほとんど行われず、腹腔鏡手術は特殊な状況を除いて行われません。

1)体外衝撃波破砕術(ESWL)
体外から衝撃波を結石に当て細かく壊す治療です。 この治療のメリットは、麻酔をすることなく鎮痛剤を使用して治療することが可能な点と、1泊入院または外来通院での治療が可能な点です。 10mm前後の腎・尿管結石が治療の対象となります。 15mmを越えるような大きな結石や硬い結石は、複数回の治療が必要な場合があります。 当院では病院の新築移転に伴い最新のドルニエ社製ESWL装置(DeltaⅢ)を導入しました。 この装置は、衝撃波のパワーは増加し結石に焦点を合わせる操作性が改善されており早く効果的な治療が期待できます。 ESWLの治療経験が豊富な医師が担当します。


軟性鏡

2)経尿道的腎尿管砕石術(TUL)
尿管の中に細い内視鏡を入れ、結石に直接ホルミウムレーザーを当てて細かく壊して、結石の破片を体外に取り除く手術です。 この治療の特徴は、麻酔と入院が必要ですが、体外衝撃波破砕術(ESWL)が苦手な2cm程度の大きな結石や硬い結石、多発する結石に対しても有効であり確実な治療です。 また、結石の位置がどこであっても、軟らかい軟性尿管鏡を使用し結石までアクセスすることができるため、治療が可能です。 破片を体外に取り出すことで大きな破片は体内に残りません。 治療の終わりに尿管ステントという細いカテーテルを入れ2~7日間程度で抜きます。 手術時間は平均40分前後、入院期間は通常4日間前後です。 当院は最新のホルミウムレーザー装置(ルミナス社製Pulse 120H with Moses Technology)を含め3台のホルミウムレーザー装置と複数の内視鏡を常備し、 迅速な治療に対応しており有数の手術件数と実績がある施設として知られています。このため全国から毎年多数の医師が見学に来院しています。

体外衝撃波砕石術よりも高度な技術と治療設備が必要ですが、 当院は複数台のホルミウムレーザー装置があり迅速な治療が行えるため、全国でも有数の手術件数と実績のある施設です。
  • 経尿道的腎尿管砕石術
  • TUL手術の様子
    TUL手術の様子
  • ホルミウムレーザー
    ホルミウムレーザー
  • 軟性鏡
    軟性鏡
  • 軟性鏡
    軟性鏡
  • TUL手術
    TUL手術
3)経皮的腎砕石術(PNL)、経皮的経尿道的同時砕石術(ECIRS)
経皮的腎砕石術(PNL)は、背中から腎臓に内視鏡の通り道を作成し、直接、腎臓の結石を壊して取り除く手術です。 この治療の特徴は、他の上記の治療法(ESWL、TUL)では治療が困難な大きな腎結石を短時間で治療することが可能な点です。 従来はうつぶせの体位で手術をすることがほとんどでしたが、当院では『修正Valdivia体位』という麻酔管理が容易で体に負担の少ない体位で手術をすることが多いです。 腎臓の通り道が太いと出血のリスクがありますが、当院では細い内視鏡を使用し腎臓の穴を極力細くすることで腎臓からの出血を減らし、傷の回復を早めるように努めています。 経皮的経尿道的同時砕石術(ECIRS)は、PNLとTULを同時に行い結石を治療する方法です。 この方法のメリットはPNL、TULそれぞれ単独では治療が困難な時に、2つの治療を組み合わせて全ての結石を治療することを可能にする点です。 術者は2人で行うことが多いです。 PNL、TULのそれぞれに熟練した術者が必要で道内で実施している施設は非常に限られています。 結石を取り除いたらPNLでは腎瘻カテーテルを入れて終了します。ECIRSでは腎瘻カテーテルと尿管ステントを留置します。 腎瘻カテーテルは手術後2-5日後、尿管ステントは1週間前後に抜きます。 手術時間は1-2時間前後、入院期間は通常5-7日間前後です。 当院ではレーザー装置の他に、大きな結石を早く壊し除去が可能な超音波砕石機と空気衝撃波砕石機(Swiss社製Lithoclast MasterJ)を常備しており、 他の病院で治療困難な結石(例:大きなサンゴ状結石、寝たきりなどの合併症のある患者さんなど)に対するPNL、ECIRS手術を全道各地から依頼されています。
当院で1回の治療で完全に結石が無くなった患者さんにレントゲン写真を示します。
  • PNLの手術前のレントゲン画像
    PNLの手術前のレントゲン画像
  • PNLの手術後のレントゲン画像
    PNLの手術後のレントゲン画像
  • PNLの手術
    PNLの手術
  • PNLの手術
    細径腎盂鏡
  • PNLの手術
    Lithoclast MasterJ
4)経尿道的膀胱砕石術(TUCL)
膀胱内に内視鏡を入れ、結石をホルミウムレーザーや超音波砕石機と空気衝撃波砕石機などで壊し取り除きます。 非常に大きな結石でも内視鏡で治療が可能です。場合によっては開腹手術で結石を丸ごと摘出します。 前立腺肥大症を合併している場合には、同時に経尿道的レーザー前立腺核出術(HoLEP)を行うことがあります。
  • 膀胱結石のレントゲン画
    膀胱結石のレントゲン画
  • 膀胱結石の3D CT画像
    膀胱結石の3D CT画像
  • 膀胱結石のCT画像
    膀胱結石のCT画像
  • 膀胱結石の内視鏡画像
    膀胱結石の内視鏡画像

尿路結石症の再発予防

尿路結石は体外に結石が出たら治療が終わりではありません。 結石は再発しやすい病気のため予防が重要だからです。 結石にカルシウムが含まれる場合、5年間で45%の人が再発するといわれています。 当院では結石で入院された患者さんや外来通院中の患者さんに対し、管理栄養士による食事指導を積極的に行い、再発予防に心がけています。 再発予防のポイントは、結石になりやすい病気がないか調べることに加え、以下の3つが重要となります。

1水分をしっかりとる

十分な水分摂取は尿路結石の再発予防の基本です。
食事以外に1日2リットル以上の水分摂取を勧めています。

2肥満の防止

肥満の指標のひとつに、BMI(Body Mass Index体格指数)があります。BMIが25を超えないように、食事の調整や適度な運動習慣を心がけましょう。

BMI =
体重(kg)÷ 身長(m)÷ 身長(m)
22が標準、25以上が肥満

3食生活の改善(5つ)

  • シュウ酸とプリン体をひかえる

    食事から摂取されるシュウ酸とプリン体は、体内で分解されると尿酸となり、尿酸は結石の“原料”です。 そのため、食事からとりすぎないように注意することで再発を予防できる可能性があります。 シュウ酸を多く含む食物は、ほうれん草、タケノコ、ブロッコリー、カカオ、紅茶、お茶(とくに玉露・抹茶)など、 プリン体を多く含む食物は肉類(特に動物の内臓)、魚介類、干物、ビールなどです。

  • カルシウムをとる

    食事でとったカルシウムは、腸の中でシュウ酸と結合し、シュウ酸が体内に吸収されるのを防ぐことで結石予防につながることが知られています。 しかし日本人のカルシウムの摂取量は不足していると言われています。 カルシウムが不足しないように、かつ過剰にならないように心がけましょう。 (サプリメントでの摂取は過剰症につながるおそれがあります。)

  • クエン酸をとる

    クエン酸とは、果物などに含むすっぱい成分です。 クエン酸をとると尿がアルカリ化され、結石のつくりにくい環境になることがわかっています。 クエン酸は食事からの摂取に加えて、クエン酸製剤というお薬を使用する方法もあります。 また、‘クエン酸’と‘ビタミンC’は異なる成分です。 ビタミンCは大事な栄養素ですが、過剰にとってしまうと結石の原因になりうる報告があります。 そのため、サプリメントでのビタミンC摂取はひかえましょう。 ただし、日常的な果物・野菜によるビタミンC摂取では過剰になることはほとんどありませんので、制限の必要はありません。

  • 塩分をとりすぎないように

    過剰な塩分摂取が、結石の再発に関連していることが知られています。 濃い味付けや漬物、汁物、麺類などは塩分を多くとってしまう原因になります。 薄味を心がけましょう。

  • 遅い夕食は禁物!

    「結石は夜作られる」という言葉があります。 遅い夕食や就寝から眠りにつくまでの時間が短いと、寝ている時に多くの栄養が吸収され、 尿の中の結石の“原料”が多く排出され、結石が作られやすくなります。 夕食は腹7分目にひかえ、夕食から寝るまでは少なくとも4時間空けることをおすすめします。