過活動膀胱

過活動膀胱

膀胱には尿を溜めるはたらき(蓄尿機能)と尿を排出するはたらき(排尿機能)があります。 何らかの原因で蓄尿機能に障害が出ると、膀胱に尿が十分溜まらないうちに尿意をもよおしたり、強い尿意で我慢しきれずに尿を漏らしてしまいます。


急に我慢できないような尿意をもよおし、自ら制御できなくなる状況=尿意切迫感(にょういせっぱくかん)を必須とした症状症候群を過活動膀胱と言います。 急に我慢できないような尿意をもよおし、自ら制御できなくなる状況=尿意切迫感(にょういせっぱくかん)を必須とした症状症候群を過活動膀胱と言います。

過活動膀胱の原因

過活動膀胱の原因は大きく2つに分けられ、膀胱を制御する神経に原因があるものと、それ以外に原因があるものにわかれます。 膀胱の機能は脳やせき髄により制御されているため、それらの部位に疾患があると膀胱機能の調律が取れず過活動膀胱の原因となります。 脳の疾患としては脳出血や脳梗塞といった脳血管障害、パーキンソン病、脳腫瘍など、せき髄の疾患としてはせき髄損傷や多発性硬化症、脊椎変性疾患などが原因としてあげられます。 神経以外のものが原因であるものとして、男性の前立腺肥大症、女性の骨盤臓器脱などを始めメタボリック症候群に起因する様々な病態もその原因としてあげられます。

過活動膀胱の鑑別疾患

過活動膀胱と間違えやすい疾患として膀胱がんや尿路結石、膀胱炎などの膀胱疾患、子宮内膜症などの膀胱周囲臓器の疾患、多尿、心因性頻尿、薬剤の副作用などがあげられ、その鑑別については泌尿器科専門医での問診や検査が必須となります。

過活動膀胱の治療

いずれも膀胱のコントロールを改善させることが目的になります。 減量、禁煙、食事指導などの行動療法や尿を我慢し蓄尿症状を改善させる膀胱訓練などがあげられます。そのほか、膀胱をリラックスさせるような薬剤を用いる薬剤治療や電気刺激を用いる神経変調療法、前立腺肥大症や尿失禁に対する外科的治療も用いられます。

過活動膀胱の新たな治療 ボツリヌス療法

過活動膀胱の新たな治療の選択肢
過活動膀胱は、切迫性の尿失禁や尿意切迫感、頻尿などの症状を認められており、国内では40歳以上の日本人の12.4%(8人に1人)が過活動膀胱の症状を持つといわれております。 現在でも内服治療を中心としておりますが、効果が不十分、口渇、便秘などの副作用のため継続できない場合もあります。 その中で、尿失禁、頻尿の新しい治療法として、ボツリヌス療法が保険適用になりました。 当院では薬の内服で治療が困難な難治性の過活動膀胱に対して、ボツリヌス療法を検討いたします。1回の投与で治療効果は約6~9ヶ月程度 持続するといわれており、効果が減弱した場合も4 ヶ月以上間隔を空けて繰り返し治療が可能です。

ボツリヌス療法とは?
ボツリヌス菌によって産生されるA型ボツリヌストキシンを膀胱壁に直接注射することで膀胱の筋肉を弛緩(緩める)させる働きがあります。 過活動膀胱では無抑制性収縮(我慢が効かずに膀胱の筋肉が収縮する)によって頻尿や切迫性尿失禁が起こるため、膀胱を弛緩させることで症状を緩和させる治療です。

おすすめしたい方
・お薬の治療を12週間以上行っても症状の改善効果が不十分な方
・副作用などにより治療継続が困難な方
※合併症や状態などにより、治療対象とならない場合もあります。

治療期間
個々の状態・麻酔方法などにより異なりますが、入院の場合は2~3日程度となります。
入院を必要とせず日帰りでの施行も可能な場合もあります。(いずれも保険適応)

手術
膀胱鏡を挿入して膀胱の筋肉に細い針でボツリヌストキシンを過活動膀胱では20箇所、神経因性膀胱では30箇所に分けて注射します。

手術後の経過観察
ボツリヌス療法の直後は血尿、排尿時痛を自覚することがありますが、通常は2~3日以内に改善します。また、一次的に排尿が困難となり、カテーテルでの導尿が必要になることもあります。また、膀胱炎症状を起こすこともありますので、抗菌薬を内服していただく場合があります。 治療の効果が現れるのは2~3日程度から1~2週間以内で、効果の持続期間は約6〜9ヶ月程度と報告されています。1回目の効果が不十分な場合でも4ヶ月程度 空けて2回目の治療をすることで症状が改善する事もあります。 治療後は定期的な通院で経過を診させていただき、排尿状態や残尿の程度などによる評価を行います。

ボツリヌス療法の合併症など気にすることは?
副作用として、残尿量の増加、尿閉、尿路感染症がおこることがあります。1回のボツリヌス療法の効果は持続期間があり、約6〜9ヶ月程度とされています。それ以降経過すると効果が弱まっていきますので、定期的なボツリヌス療法を行うと効果が維持されることになります。ごくまれに、繰り返し注射を行っていくと中和抗体が産生されて効果を得にくくなることがあります。その他の注意事項として、避妊が必要で、女性は投与後2回目の月経を経るまで、男性は投与後3カ月以上経過するまで妊娠を避ける必要があります。

最後に

現在、過活動膀胱はTVCMなどでの啓蒙活動も功を奏し、内科医など泌尿器科以外の医師向けにも治療ガイドラインが作成され、気軽に治療が受けられるようになりました。しかしその反面、泌尿器科医の眼の届かないところで治療が進み、ほかの重大な病気が見逃されたり、治療薬の思わぬ副作用に悩まされる患者様を見る機会も増えてきております。 一度当院を始めとした専門医での精査を受けることをお勧めいたします。